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後弯形成術 (バルーンカイフォプラスティ)

骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折に対する後弯形成術(バルーンカイフォプラスティ)

背骨のことを医学では「脊椎」と呼んでいます。

脊椎圧迫骨折は脊椎が押し潰されるように変形してしまう骨折です(図1)。

様々な原因で脊椎圧迫骨折は起こり、これらの骨折は特に、腰の背骨(腰椎)や胸の背骨(胸椎)に多く生じます。

代表的な原因として骨粗鬆症(こつそしょうしょう:骨のカルシウムが減少し、骨が脆くなる状態)、外傷、悪性腫瘍(癌)の転移、脊椎の良性腫瘍などがあります。

特に高齢の女性では骨粗鬆症に伴う圧迫骨折の頻度が高く、ごく軽度の打撲やしりもちでも、脆くなった脊椎が骨折を起こします。

代表的な症状は、背中や腰の痛みです。

体を動かす時に背骨の骨折に負担がかかり、痛みが発生します。

骨折によって神経が押されたりすると、足のしびれなどが起こることもあります。

一方、症状が軽微でほとんど日常生活に支障をきたさない患者さんもいらっしゃいます。

これまで、このような骨折の痛みに対して、鎮痛剤の投与や安静、コルセットの使用などで治療されていましたが、痛みがなかなか取れなかったり、高齢の患者さんでは長期臥床による足腰の弱り、肺炎、痴呆症状が生じるなどの、さまざまな合併症がみられやすくなってきます。

脊椎圧迫骨折に対する後弯形成術(バルーンカイフォプラスティ)

圧迫骨折した背骨(脊椎)に針を刺して、針からバルーン(風船)が先端についた器具を潰れた脊椎内に挿入します。

このバルーンを膨らませることによって潰れた脊椎を少しでも回復し、セメント注入の空間を作成します。

この空間に医療用のセメント(骨セメント:ポリメチルメタクリレート)を注入して、潰れた背骨を固める治療方法です(図2)。

潰れた背骨の高さを回復し、骨セメントで補強することにより、背骨のゆがみを矯正し、痛みを緩和することができます。

この治療は全身麻酔で行う必要がありますが、小さい皮膚切開をおき針で穿刺するのみであり、患者さんの負担は軽く、また所要時間は1時間程度です。

治療後の長期安静は不要で、翌日からは起き上がりが可能となります。1990年代後半頃より米国を中心に、骨粗鬆症による圧迫骨折の治療に数多く施行され、その有用性が認められるようになりました。

我が国でも強い痛みを伴った骨粗鬆症による圧迫骨折の治療方法として、平成23年1月より保険適応となっています。

しかしながら、この手術を行うには資格が必要であり、限られた医療機関でのみ実施されているのが現状です。

経皮的椎体形成術の適応と治療効果について

骨粗鬆症による圧迫骨折が原因の背部痛あるいは腰痛に対して行われます。

骨折自体による痛みには効果がありますが、神経自体が圧迫されて生じる神経痛などには効果がありません。

治療を行う前に痛みの種類と原因を調べ効果が期待できると判定したときに行います。

治療によりどの程度痛みが緩和するかの予測はできませんが、全体として痛みの60-70%程度は軽減するといわれており、大半の症例で日常生活の不便さも改善することが多いといわれています。

痛みの改善により痛み止めの必要がなくなる、あるいは減らすことができるなどの効果も期待できます。治療を行う前より症状が悪くなることはほとんどありません。

入院期間について

治療翌日にでも退院は可能で、実際欧米では外来で治療を行っている施設もあります。しかし、治療後痛みが一時的に強くなるようなこともあり、通常1週間位入院をして頂いています。

具体的な治療方法について

治療は手術室で行います。

全身麻酔をかけたあとに、手術台に腹ばいの姿勢になっていただきます。

手術中にレントゲン撮影で確認しながら、背中から針を脊椎内に進めます。針が脊椎内の最適部位にあることを確認した後、バルーンを背骨の中に挿入します。

バルーンを拡張することによりつぶれた脊椎の高さを回復し、セメント注入のためのしっかりとした空間を形成しセメントの漏れを防ぐことができます(図3)。

 

歯磨き粉くらいの柔らかい骨セメントをレントゲンで確認しながら慎重に脊椎内に注入し、針を抜いて終了です(図4)。

通常治療は1時間程度で終了します。

骨セメントは約1時間程度で固まりますが、全身麻酔管理を行うこともあり、手術日はベット上で安静をとってもらいます。

翌日より歩行などは自由にしてもらいます。

また治療の後、一時的に針を刺した部分が痛むことがありますが、通常2-3日でよくなります。

合併症について

合併症の頻度は高くありませんが、いくつかのものが考えられます。

注入したセメントが周囲にもれることによる合併症も起こりえます。

脊柱管という、脊髄が通る場所に漏れると麻痺やしびれ、痛みなどの神経症状が起こり、場合によっては手術で取り出さなければなりません。

幸い、注意深く観察しながらセメントを注入すれば、症状が出るほどの量のセメントが漏れることは非常に稀です。

セメントが血管に入り、肺などに飛んでしまう塞栓症を起こす場合や血圧低下、徐脈などのショックを起こす可能性がありますが、やはり非常に稀です。

その他、感染、出血など針を刺すこと自体による合併症が起こりえます。

針の穿刺に伴う合併症として脊椎の周囲には大切な神経や血管があり、また、胸椎の治療では肺が近くにあるためこれらを損傷するリスクがあります。

手術中のレントゲン撮影で確認しながら針を刺すことによりこれらの危険性は非常に少ないものとなります。

治療後の生活で気をつける事

治療後の生活で気をつける事は、特にありません。

しかし、痛みがなくなったことでかえって無理をして、治療した以外の背骨を骨折してしまうことがあります。

基本的には骨が脆弱になった方への治療ですので、それなりに注意が必要です。

 

当院は、脊髄脊椎疾患のボリュームセンターとして、県内外から来られる方々の診療に日々力を注いでおります。

脊髄脊椎疾患でお困りの方はお気軽にご相談ください。

 

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